Anthropicの公式サイトで「Claude Security」という名前を見かけ、Claude Code向けに公開されたセキュリティ機能だと思い公式ドキュメントを確認したところ、実は同じ名称が指すものが一つではないと分かりました。本記事では、まず名称の整理をしたうえで、Claude Code にベータ提供されている「Claude Security」プラグインを中心に、仕組みと使い方を公式ドキュメントに沿ってまとめます。
結論から — 「Claude Security」は実は3つある
Anthropicのサイトを確認すると、似た名前・似た役割を持つ機能が3つ存在します。
| 名称 | 実行場所 | 対象 | 利用可能プラン |
|---|---|---|---|
| Claude Security(管理型サービス) | claude.ai/security(Webのサイドバーから) | 接続済みリポジトリの継続的な監視・定期スキャン | Enterprise(Team・Maxは順次提供予定) |
| Claude Security プラグイン(本記事の主題) | Claude Code セッション内、/claude-security コマンド | リポジトリ全体、または変更差分(ブランチ・PR・コミット単位)の単発スキャン | Claude Code v2.1.154以降・有料プラン全般 |
| security-guidance プラグイン | Claude Code セッション内、インストール後は自動実行 | Claudeがそのセッションで書いたコードの編集時・ターン終了時・コミット時のレビュー | 全プラン |
管理型サービスとプラグインは同じ「Claude Security」を名乗りますが、公式ドキュメントは両者をはっきり区別しています。
If you want a managed service that monitors your repositories, see the Claude Security product, available on the Enterprise plan. The plugin reaches code the managed product can’t reach, such as repositories hosted on GitLab or Bitbucket, or on networks that don’t allow inbound connections.
(リポジトリを継続的に監視する管理型サービスをお求めの場合は、Enterpriseプランで利用できるClaude Security製品をご覧ください。プラグインは、GitLabやBitbucketでホストされているリポジトリや、インバウンド接続を許可しないネットワークなど、管理型サービスが届かないコードにも届きます)
つまりプラグインは、リポジトリのホスティング先を問わず、自分のマシン(またはClaude Codeのセッション)から単発でスキャンを回せる版という位置づけです。以下、このプラグインについて見ていきます。
背景 — Claude Code Securityから続く取り組み
Anthropicは公式ブログで、Claude Securityの前段にあたる取り組みにも触れています。
Recently, we made Claude Mythos Preview—which can match or surpass even elite human experts at both finding and exploiting software vulnerabilities—available to a number of partners as part of Project Glasswing. But our cybersecurity efforts go beyond Glasswing: with Claude Security, a much wider set of organizations can put our most powerful generally-available model, Claude Opus 4.7, to work across their codebases.
(最近、脆弱性の発見と悪用の両面で卓越した人間の専門家に匹敵ないし凌駕し得る「Claude Mythos Preview」を、Project Glasswingの一環として一部のパートナー向けに提供しました。しかし、当社のサイバーセキュリティへの取り組みはGlasswingにとどまりません。Claude Securityによって、より幅広い組織が、現時点で一般提供している最も強力なモデルであるClaude Opus 4.7を、自社のコードベース全体に活用できるようになります)
この管理型サービスは2026年4月30日にEnterprise顧客向けの公開ベータになったと公式ブログに記載されており、数百の組織による限定リサーチプレビューでの検証を経ての一般提供拡大だとされています。今回Claude Codeに追加されたプラグインは、この取り組みで培われた検出手法を、リポジトリのホスティング先を問わず単発で使える形にしたものと位置づけられます。
プラグインの仕組み — 複数エージェントによるスキャン
Claude Security プラグインは、Claude Codeのセッション内でリポジトリの多エージェントスキャンを実行します。
The Claude Security plugin runs a multi-agent vulnerability scan of your codebase inside a Claude Code session. A team of Claude agents maps your architecture, builds a threat model, hunts for vulnerabilities, and independently reviews every finding before writing the report.
(Claude Security プラグインは、Claude Codeのセッション内でコードベースの多エージェント脆弱性スキャンを実行します。複数のClaudeエージェントから成るチームがアーキテクチャを把握し、脅威モデルを構築し、脆弱性を探索したうえで、レポートを書く前に一つひとつの発見事項を独立して検証します)
公式製品ページによれば、対象として想定されているのは、メモリ破損・インジェクション・認証回避・複雑なロジックエラーなど、既知のパターンに当てはまらない高重度の脆弱性です1。発見事項を書いたエージェントとは別のエージェントが検証してからレポートに載せる仕組みのため、スキャン結果は決定的ではなく、同じコードを2回スキャンしても異なる発見が出ることがあると明記されています。
このプラグインは、Claude Codeにもとから備わる他の仕組みとも役割が分かれています。編集の最中にリアルタイムでレビューする security-guidance プラグイン、ブランチに対して1回だけ実行する /security-review コマンド、プルリクエストで動くCode Reviewとは別物で、それぞれ深さと実行タイミングが異なります(後述の対応表を参照)。
前提条件
公式ドキュメントに記載された前提条件は次のとおりです2。
- Claude Code v2.1.154以降・有料プラン(スキャンのオーケストレーションに使う dynamic workflows のため。Proプランでは
/configの「Dynamic workflows」の行から有効化が必要) python3として実行できるPython 3.9.6以降がPATH上にあること(プラグインのツールはPython標準ライブラリのみを使うため、追加インストールは不要)- Linux・macOS・Windowsのいずれか
- Git(変更差分のスキャンとパッチ作成に必要。バージョン管理なしのディレクトリでもリポジトリ全体のスキャン自体は動作する)
インストール
Claude Codeのセッション内で、公式マーケットプレイスからインストールします。
/plugin install claude-security@claude-plugins-officialマーケットプレイスが見つからない場合は、先に追加してから再試行します。
/plugin marketplace add anthropics/claude-plugins-officialインストール後、再起動なしで反映させるには次を実行します。
/reload-plugins削除する場合は /plugin メニューから、またはターミナルで claude plugin uninstall claude-security を実行します2。
使い方 — /claude-security の3つのジョブ
インストール後は /claude-security コマンドが追加され、実行するとメニューが開きます。選べるジョブは次の3つです2。
- Scan codebase(リポジトリ全体のスキャン)
- Scan changes(変更差分のスキャン)
- Suggest patches(パッチ提案)
基本的な流れは、リポジトリ全体をスキャンしてから、見つかった発見事項をパッチに変える、というものです。
/claude-securityを実行し、Scan codebase を選ぶ- スキャン範囲を選ぶ。プラグインが先にリポジトリを読み込み、リポジトリ全体か絞り込んだ範囲かを、それぞれのファイル数とおおよそのコストとともに提示する。「わからない」と答えれば、リポジトリの規模に応じた妥当な既定値が選ばれる
- 実行を確認する。スキャンには時間がかかり、トークンも相応に使用し、完了までClaude Codeを開いたままにする必要があるため、確認するまで何も実行されない
- レポートを読む。進行中は各段階が逐次報告され、詳細は
/workflowsで確認できる。結果はリポジトリ内のタイムスタンプ付きディレクトリに保存される - Suggest patches を選び、対応したい発見事項を選ぶ
- 採用するパッチを、それぞれ別のプルリクエストとして自分の手で適用する(
git apply)。パッチが自動で適用されることはない
メニューを介さず、引数として直接指定することもできます(例: /claude-security scan my branch)。また「commit abc1234 をスキャンして」のように自然文でも指示できます。プラグインは、各ステップで許可を求められることなくエージェントが進められる auto mode で最も効果を発揮するとされ、ジョブ開始時に有効化方法が案内されます。
変更差分だけをスキャンする
ベースブランチより先にコミットがある場合、/claude-security のメニューはその差分だけのスキャンを提案します。マージ前のブランチを確認したい場合に使えます。開いているプルリクエストや単一コミット(例: 「commit abc1234 をスキャンして」)を指定することもできます。ただしスキャンされるのはコミット済みの変更のみで、作業中の変更はコミットまたはスタッシュするか、作業ツリーを読むリポジトリ全体のスキャンを実行する必要があります。変更差分のスキャンにはGitリポジトリが必須ですが、バージョン管理外のディレクトリでもリポジトリ全体のスキャンは動作します。開いているプルリクエストを探す処理だけはネットワークにアクセスするため、セッションが gh コマンドの実行権限を持ち、gh にサインイン済みの場合にのみ提示されます2。
大きなリポジトリでは範囲を絞る
大きなリポジトリでは、ツリー全体ではなく一つの領域ずつスキャンするほうがよいとされています。APIレイヤーや認証まわりのコードなど、プラグインが提示する絞り込んだ範囲の一つを選べば、実行規模もそれに合わせて調整されます。レポートの「coverage」の節に、実際に調べた範囲と調べなかった範囲が記載されるため、別の領域は別のスキャンとして後から実行できます2。
レポートの読み方
各スキャンは、リポジトリ内に CLAUDE-SECURITY-<タイムスタンプ>/ という名前のディレクトリを作成し、そこに結果を書き出します2。
CLAUDE-SECURITY-RESULTS.md: レポート本体。各発見事項にF1のようなIDが振られ、影響・悪用シナリオ・深刻度・確信度・推奨対応が記載されるCLAUDE-SECURITY-RESULTS.jsonl: 同じ発見事項を1行1JSONの機械可読形式で記載したものCLAUDE-SECURITY-REVISION-<コミット>.json: どのコミットを、どの程度の実行量で、作業中の変更を含めてスキャンしたか、どれだけ厳密に検証されたかを記録する「改訂スタンプ」。バージョン管理外でスキャンした場合はコミットの代わりにUNVERSIONEDと記録される
このディレクトリがスキャンによる唯一の変更点で、専用の .gitignore を持つため、うっかり git add してもレポートがコミットに紛れ込みません。監査のために履歴へ残したい場合は、この .gitignore だけを削除してディレクトリごとコミットすればよいとされています。
発見事項は、独立した検証エージェントが分析したあとにのみレポートへ載るため、レポートは短く、読む価値があるものに絞られるとされています。一方でスキャンは決定的ではなく、同じコードを2回スキャンしても異なる発見が出ることがあるため、定期的にスキャンを回し、改訂スタンプで各レポートをどのコード・どの設定に対応するものかを紐づけて使うことが推奨されています。
見つかった脆弱性を直す — パッチ提案の仕組み
/claude-security メニューから Suggest patches を選ぶか、「finding F3 を直して」のように依頼すると、レポートのどの発見事項に対応するかを選べます。パッチはコミット済みのコードに対して作られるため、レポート作成後にそのコードが変わっていた場合は、その発見事項はスキップされ、代わりに新しいスキャンが提案されます。各パッチはリポジトリの作業用コピー上で作成されるため、パッチを適用するまで元のソースファイルは変更されません2。
パッチが手元に届く前に、それを書いたエージェントとは別のエージェントによるレビューが入ります。テストがあるコードであればそのテストを実際に走らせ、差分そのものも独自の視点で読みます。次の3点を保証できる場合にのみパッチが書かれます。
- 対象の発見事項に対応していること
- 新たな脆弱性を持ち込んでいないこと
- それ以外の挙動を変えていないこと
いずれかを保証できない場合は、パッチの代わりに理由を説明する短いメモが返されます。
Applying a patch is always your decision.
(パッチを適用するかどうかは、常にユーザー自身の判断です)
パッチはレポートの patches/ フォルダに、発見事項ごとに F<n>.patch という形で1件ずつ保存され、変更内容を説明するメモが添えられます。自分のシェルから適用するか、Claudeに適用とプルリクエスト作成を依頼します。
git apply CLAUDE-SECURITY-<タイムスタンプ>/patches/F1.patch対象のコードにテストがない場合は、その旨がメモに明記され、レビューがテストの実行なしで行われたことが分かるようになっています。各パッチは、個別にレビュー・テストできるよう、それぞれ別のプルリクエストとして適用することが推奨されています2。
他のセキュリティ機能との位置づけ
公式ドキュメントは、Claude Securityプラグインを含む一連のセキュリティ機能を、多層防御(defense in depth)の一部として次のように整理しています2。
| 段階 | 機能 | カバーする範囲 |
|---|---|---|
| セッション内 | security-guidance プラグイン | Claudeが書いたコードにあるよくある脆弱性を、同じセッション内で修正する |
| オンデマンド・単発 | /security-review | 現在のブランチに対して1回だけ実行するセキュリティチェック |
| オンデマンド・詳細スキャン | Claude Security プラグイン | リポジトリまたは差分の多エージェントスキャン。発見事項とパッチは独立してレビューされる |
| プルリクエスト時 | Code Review(Team・Enterpriseプラン) | リポジトリ全体の文脈をふまえた、正当性とセキュリティの多エージェントレビュー |
| 管理型 | Claude Security(Enterpriseプラン) | 接続済みリポジトリを継続的に監視するホスト型サービス |
| CI | 既存の静的解析・依存関係スキャナー | 言語ごとの規約、サプライチェーンの確認、ポリシーの強制 |
ドキュメントは、このプラグインが既存のセキュリティツールを置き換えるものではないと明記しています。静的解析・依存関係スキャン・コードレビューと並行して使うことが想定されており、決定的なチェックを行うそれらのツールに対して、人間のセキュリティ研究者のようにコードを推論する点を補完的な役割としています。
まとめ
- 「Claude Security」という名称は、Enterpriseプラン向けの管理型サービス(claude.ai/security、継続的な監視)と、Claude Code向けのプラグイン(
/claude-security、単発スキャン)の両方を指す。両者は別物で、プラグインはGitLab・BitbucketホストのリポジトリやインバウンドFW制限下のネットワークなど、管理型サービスが届かない環境にも対応する - プラグインは、複数のClaudeエージェントがアーキテクチャの把握・脅威モデル構築・脆弱性探索を行い、書いた本人とは別のエージェントが独立して発見事項を検証してからレポートに載せる。そのためスキャンは決定的ではなく、同じコードでも実行のたびに結果が変わり得る
- 前提条件はClaude Code v2.1.154以降・有料プラン(Proは
/configでdynamic workflowsを有効化)、python3としてのPython 3.9.6以降、Git(変更差分・パッチ用) - インストールは
/plugin install claude-security@claude-plugins-official→/reload-plugins。使い方は/claude-securityのメニューから「Scan codebase」→「Suggest patches」という流れが基本 - 結果はリポジトリ内の
CLAUDE-SECURITY-<タイムスタンプ>/ディレクトリに保存され、専用の.gitignoreによって誤ってコミットに含まれることを防いでいる - パッチは独立したエージェントのレビューを経てから提示されるが、適用は常にユーザー自身の判断で、自動適用は行われない
- security-guidance プラグイン・
/security-review・Code Review・管理型のClaude Security・CIの静的解析ツールと役割が分かれており、既存のセキュリティツールを置き換えるものではないと公式に位置づけられている
参考
- Scan your codebase for vulnerabilities — Claude Code Docs(2026年7月23日確認)
- Claude Security — Claude by Anthropic(2026年7月23日確認)
- Claude Security is now in public beta — Claude by Anthropic(2026年7月23日確認。初出は2026年4月30日、2026年6月21日更新)
- Catch security issues as Claude writes code — Claude Code Docs(2026年7月23日確認。security-guidance プラグインの仕様)
参考文献
Claude Security — Claude by Anthropic。対象とする脆弱性の例としてメモリ破損・インジェクション・認証回避・複雑なロジックエラーなどが挙げられている。 ↩
Scan your codebase for vulnerabilities — Claude Code Docs。前提条件(Claude Code v2.1.154以降、Python 3.9.6以降、Git)、インストール手順、
/claude-securityの3つのジョブ、レポートのディレクトリ構成、パッチ提案の仕組み、他のセキュリティ機能との対応表など、本記事の使い方に関する記述の主たる典拠。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
