先日、友人から「どの生成AIサービスを使えばいいの?」と聞かれ、「ぶっちゃけ、聞きたいことを日本語で聞ければ全部同じじゃない?」と身も蓋もない回答をしてしまいました。言った本人としても、これで済ませてよいのかという引っかかりが残ります。そこで本記事では、この回答がどこまで正しいのかを、主要3サービス——ChatGPT(OpenAI)・Claude(Anthropic)・Gemini(Google)——の公式サイト・公式ヘルプ・公式ドキュメントを読み比べて検証します。各社の宣伝文句ではなく、料金ページや利用規約・ヘルプに書かれている事実だけを材料にします(価格・モデル名はいずれも2026年7月21日時点の確認値です)。

結論を先に — 比較表

項目ChatGPTClaudeGemini
開発企業OpenAI(米国)Anthropic(米国)Google(開発は Google DeepMind)
最新モデルGPT-5.6 SolClaude Fable 5 / Claude Sonnet 5Gemini 3.1 Pro / Gemini 3.6 Flash
無料プランありありあり
個人向け有料(月額)Go $8 / Plus $20 / Pro $100〜Pro $20 / Max $100〜Plus ¥1,450 / Pro ¥2,900 / Ultra $100〜
アプリWeb・iOS・Android・macOS・WindowsWeb・iOS・Android・macOS・Windows・Linux(β)Web・iOS・Android(Android OSにも統合)
APIありありあり
画像の読み取り
画像の生成×(読み取り専用)○(Nano Banana系)
音声会話○(β)○(Gemini Live)
動画の生成×(Soraは提供終了)×○(Veo 3.1)
会話の学習利用設定でオフにできる設定で選択する設定でオフにできる

表を眺めるだけでも、冒頭の回答の当否はおおよそ見えてきます。「日本語で質問して答えをもらう」という入口の体験は、確かに3社ともほぼ同じです。無料プランがあり、$20前後の標準プランと$100級の上位プランがあり、スマホアプリとAPIが揃っている——この骨格は3社で綺麗に横並びになりました。一方で、動画・画像の生成、他サービスとの連携、データの扱いといった「周辺」には、はっきりした違いが残っています。以下、1社ずつ公式資料で確認していきます。

ChatGPT(OpenAI)— 機能の「幅」で先行する

開発企業は OpenAI です。プライバシーポリシー上のデータ管理者は OpenAI OpCo, LLC(米国サンフランシスコ)と記載されています。

最新モデルは、2026年7月9日にロールアウトが始まった旗艦推論モデル GPT-5.6 Sol です。公式のモデルリリースノートには、コーディング・研究・科学・サイバーセキュリティ・コンピュータ操作・デザインといった複雑な作業向けと記載されています(有料プラン向けで、無料版の日常的な既定モデルは GPT-5.5 Instant)。

料金(公式料金ページ、米ドル表記):

  • Free($0) — GPT-5.5 Instant を利用制限つきで利用可。メッセージ数・アップロード・画像生成などに上限
  • Go($8/月) — 上限を拡大した廉価プラン。「広告が表示される場合があります」と明記されている点が特徴的です
  • Plus($20/月) — GPT-5.6 系の推論モデル、Deep Research 拡張、プロジェクト・カスタムGPTなど
  • Pro($100/月〜) — 利用量5倍または20倍の2段階。画像生成が高速・無制限に
  • 法人向けには Business($25/ユーザー/月、年払いで¥3,050/ユーザー/月)と Enterprise(価格非公開)があります

対応プラットフォームは Web・iOS・Android・macOS・Windows に加え、Chrome拡張機能も公式に提供されています。API(OpenAI API)は従量課金で、最新の GPT-5.6 系は用途別に Sol(入力$5/出力$30・100万トークンあたり)・Terra($2.50/$15)・Luna($1/$6)の3種が並びます。

画像・音声・動画では、画像の読み取りと生成、音声会話をアプリ内で備える一方、動画生成サービスの Sora は2026年4月26日にWeb版・アプリの提供を終了しています(公式ヘルプに「The Sora web and app experiences were discontinued on April 26, 2026.」と明記。APIも2026年9月24日終了予定)。つまり現時点のChatGPTは、動画生成を持たないサービスです。

データの扱いは、個人向けでは会話がモデル改善(学習)に使われることがあり、設定の「Improve the model for everyone」をオフにすると学習に使われなくなります。学習に使われず30日で自動削除される「一時チャット」も用意されています。

Claude(Anthropic)— 文章とコーディングに集中し、画像は「読むだけ」

開発企業の Anthropic は、自らを「AI safety and research company」(AIの安全性の研究企業)と位置づける公益法人(Public Benefit Corporation)です。

最新モデルは、2026年6月9日に一般提供が始まった Claude Fable 5(公式モデル一覧で「最も高性能な一般提供モデル」と記載)で、無料・Proプランの既定モデルは2026年6月30日リリースの Claude Sonnet 5 です。ほかに Claude Opus 4.8(エージェント的コーディング向け)、Claude Haiku 4.5(最速・低コスト)が並びます。コンテキスト(一度に扱える文章量)は最大100万トークンです。

料金(公式料金ページ、米ドル表記):

  • Free($0) — チャット・コード生成・Web検索・メモリなど
  • Pro($20/月、年払いで$17/月) — 利用枠の拡大に加え、Claude Code(コーディング支援)などの各種ツール
  • Max($100/月〜) — 利用量5倍または20倍の2段階
  • 法人向けには Team($25/ユーザー/月〜)と Enterprise があります

対応プラットフォームは Web・iOS・Android・macOS・Windows に加え、Linux(β)・ChromeOSにも公式対応しており、3社の中では最も広い構成です。API は api.anthropic.com の直接提供に加え、Amazon Bedrock・Google Cloud・Microsoft Foundry 経由でも利用できます。

画像・音声・動画は、3社の比較で最も差が出る箇所です。画像は読み取り(内容の理解・分析)に対応しますが、生成はできません。公式ドキュメントに次のとおり明記されています。

Claude is an image understanding model only. It can interpret and analyze images, but it cannot generate, produce, edit, manipulate, or create images.

(Claudeは画像理解専用のモデルです。画像の解釈・分析はできますが、画像の生成・制作・編集・加工・作成はできません)

音声会話はβ版として全プランで利用でき、動画の生成・入力には対応していません。機能を広げるのではなく、文章・コーディング・長文の読解に絞った構成といえます。

データの扱いは、無料・Pro・Maxプランでは学習利用の可否をユーザーが設定で選択する方式です。学習を許可した場合はチャットが最大5年間、許可しない場合は従来どおり30日間保持されます(法人プランとAPIは学習対象外)。

Gemini(Google)— マルチモーダル生成とGoogle連携の広さ

開発企業は Google で、モデル開発は統合AI部門の Google DeepMind が担っています。

最新モデルは、くしくも本記事と同日・2026年7月21日に発表された Gemini 3.6 Flash です(公式ブログで同日からGeminiアプリの全ユーザーとAPIに提供と記載)。より高度な推論向けには Gemini 3.1 Pro(公式表記で「most intelligent model」)と Gemini 3.1 Deep Think が上位プランに用意されています。Flash系が3.6、Pro系が3.1と、系列によってバージョン番号が揃っていない点は公式表記のとおりです。

料金は、3社で唯一、公式ページで日本円が確認できました:

  • 無料 — Geminiアプリを使用量上限つきで利用可
  • Google AI Plus(¥1,450/月) — 使用量上限の拡大、Gmail内のGeminiなど
  • Google AI Pro(¥2,900/月) — Proモデル、Deep Research、ストレージ5TBなど
  • Google AI Ultra($100/月と$200/月の2段階) — 使用量Pro比5倍/20倍(日本円の公式表示は確認できませんでした)

対応プラットフォームは Web・iOS・Android で、専用デスクトップアプリを持たない代わりに、Android OS・Chrome・Google Workspace(Gmail・ドキュメント)への統合が進んでいます。API(Gemini API)は Google AI Studio でキーを発行でき、法人向けには Vertex AI 経由の提供があります。

画像・音声・動画は3社で最も手厚く、画像生成の Nano Banana 2 / Nano Banana Pro、音声会話の Gemini Live(70言語以上の音声リアルタイム翻訳を含む)、動画生成の Veo 3.1 が揃います。動画生成を現行サービスとして提供しているのは、3社ではGeminiだけです(前述のとおりChatGPTのSoraは提供終了、Claudeは非対応)。

データの扱いは、「アクティビティの保存」をオンにするとチャットがサービス改善(モデルの学習を含む)に使われ、オフにすると今後のチャットは学習に使われません。改善のために人間のレビュアーがチャットの一部を確認する場合があること、保存期間は既定18ヶ月(オフ時は72時間)であることが公式ヘルプに明記されています。

「全部同じ」はどこまで正しかったのか

公式資料を並べた結果を、冒頭の回答に立ち返って整理します。

「同じ」と言ってよい部分 — 日本語で質問して文章の答えを得る、画像を見せて内容を尋ねる、調べ物を頼む、といった中心的な使い方は、3社とも無料で始められ、$20前後の標準プランと$100級の上位プランという料金の骨格まで一致しています。友人の質問が「日常の調べ物や文章作成に使いたい」という趣旨なら、冒頭の回答は概ね間違っていません。どれを選んでも入口の体験は大差なく、まず無料プランで試して、話しやすいと感じたものを使えばよい——これが公式資料から言える範囲の答えです。

「同じではない」部分 — 選び方が変わるのは、次の3点に関心がある場合です。

  1. 何を生成したいか — 動画まで作りたい場合、選択肢はGeminiに絞られます(現行サービスとして動画生成を持つのはGeminiのみ)。画像生成が必要ならChatGPTかGemini。Claudeは画像を「読む」ことはできても「描く」ことはできません
  2. どの環境で使うか — Gmail・GoogleドキュメントならGeminiの統合が最も深く、Linuxデスクトップまで含めた専用アプリの広さではClaude、Chrome拡張やWindows/macOSアプリの揃い方ではChatGPTも遜色ありません
  3. データの扱いと料金の細部 — 3社とも会話の学習利用を設定で止められますが、既定の挙動・保存期間・選択方式はそれぞれ異なります。また$8で広告つきのGo(ChatGPT)、日本円で¥1,450からのPlus(Gemini)など、廉価帯の設計にも個性が出ています

なお、本記事で扱わなかった論点がひとつあります。モデルの性能(賢さ)そのものの優劣です。これは各社の公式資料——つまり自己申告——では判断できません。第三者がモデルを評価する仕組み(ベンチマークサイトや利用者投票)については、続編の「生成AIの『賢さ』は誰がどう測っているのか」で整理しています。

まとめ

  • 「日本語で聞ければ全部同じ」は、日常的なチャット用途に限れば概ね正しい。無料プラン・$20前後の標準プラン・$100級の上位プラン・アプリ・APIという骨格は3社で横並び
  • 違いが残るのは周辺部分。動画生成はGeminiのみ、画像生成はChatGPTとGemini、Claudeは画像読み取り専用
  • 連携の深さは三者三様。GeminiはGoogleサービスとAndroid、ClaudeはOS対応の広さ(Linuxβ含む)、ChatGPTは機能の幅とChrome拡張
  • 3社とも会話の学習利用は設定で制御できるが、既定値・保存期間・選択方式は異なるため、業務利用なら確認が必要
  • 性能の優劣は公式資料からは判断できない。第三者評価の仕組みは続編で扱う

参考