「ページの表示速度を上げれば検索順位が上がる」という言説は広く流通しています。しかし、どの程度影響するのか、そして現在のGoogle検索でどう扱われているのかは、意外と正確に語られていません。本記事では、SEOへの影響については、Googleが公開している公式ドキュメント(Google Search Central)と公式ブログのみを典拠として、ページ速度とSEOの関係の現在地を整理します。あわせて測定ツールも紹介します(こちらはGoogle製のツールに加えて、ホスティング事業者等の公式ドキュメントも参照します)。
結論から — 現行ドキュメントの記述
「速度はランキングに使われている。ただし単独の決定打ではなく、関連性より弱い」——これが公式資料から読み取れる現在の位置づけです。本節では、この一文の根拠を、Google Search Centralの現行ドキュメント「Google検索結果とページエクスペリエンスについて」の記述に沿って確認します。
まず前半の「ランキングに使われている」についてです。同ドキュメントは、速度を含む表示品質の指標群 Core Web Vitals(後述)を、次のように位置づけています。
Core Web Vitals are used by our ranking systems.
(Core Web Vitals は、Googleのランキングシステムで使用されています)
ページの表示性能を含む指標群 Core Web Vitals がランキングシステムで使われていることは、Googleの現行ドキュメントでも明示されています。なお、ここで使われているのは「速度」という単独の値ではなく、読み込み速度に加えて応答性・視覚的安定性も含む指標群です(構成は後述します)。
次に後半の「単独の決定打ではなく、関連性より弱い」についてです。同じドキュメントのFAQが、次の2点を明記しています。
第一に、単一の「ページエクスペリエンスシグナル」は存在しません。
There is no single signal. Our core ranking systems look at a variety of signals that align with overall page experience.
(単一のシグナルはありません。コアランキングシステムが、ページエクスペリエンス全体に沿う多様なシグナルを参照します)
第二に、コンテンツの関連性が常に優先されます。
Google Search always seeks to show the most relevant content, even if the page experience is sub-par.
(Google検索は、たとえページエクスペリエンスが劣っていても、常に最も関連性の高いコンテンツを表示しようとします)
以下、この位置づけに至る経緯を年表で確認したうえで、影響の大きさと測定方法を見ていきます。
経緯 — 速度シグナルの16年
ページ速度と検索ランキングの関係は、Googleの公式ブログで節目ごとに告知されてきました。
2010年4月 — 速度がランキングシグナルに(デスクトップ)。 公式ブログが、サイトの速度を検索ランキングに使い始めたと発表しました。ただし当時の適用範囲はごく限定的で、影響は英語のGoogle.comのみ・クエリの1%未満と説明されています。
While site speed is a new signal, it doesn’t carry as much weight as the relevance of a page. Currently, fewer than 1% of search queries are affected by the site speed signal.
(サイト速度は新しいシグナルですが、ページの関連性ほどの重みはありません。現時点で影響を受けるのは検索クエリの1%未満です)
2018年7月 — 「Speed Update」(モバイル)。 2018年1月の公式ブログが、同年7月からモバイル検索でもページ速度をランキング要素にすると発表しました。ここでも適用は「最も遅いページ」に限定されています。
The “Speed Update”, as we’re calling it, will only affect pages that deliver the slowest experience to users and will only affect a small percentage of queries.
(「Speed Update」は、最も遅い体験をユーザーに提供しているページにのみ、そして一部のクエリにのみ影響します)
The intent of the search query is still a very strong signal, so a slow page may still rank highly if it has great, relevant content.
(検索クエリの意図は依然として非常に強いシグナルであり、優れた関連性の高いコンテンツを持つページは、遅くても上位に表示されえます)
2020年5月 — Core Web Vitals の発表。 公式ブログが、読み込み速度・応答性・視覚的安定性を測る指標群 Core Web Vitals を、モバイルフレンドリー・HTTPSなど既存のシグナルと組み合わせて「ページエクスペリエンスシグナル」とする計画を予告しました。この記事には、影響の大きさを考えるうえで重要な一文があります。
A good page experience doesn’t override having great, relevant content. However, in cases where there are multiple pages that have similar content, page experience becomes much more important for visibility in Search.
(優れたページエクスペリエンスは、優れた関連性の高いコンテンツに優先しません。ただし、同程度のコンテンツを持つページが複数ある場合には、ページエクスペリエンスの重要性が大きく増します)
2021年6月〜2022年3月 — 段階的な適用。 ページエクスペリエンスのランキングへの反映は、モバイルで2021年6月中旬から8月末にかけて、デスクトップで2022年2月から3月末にかけて、それぞれ段階的にロールアウトされました。
2023年4月 — 「単一のシステム」としては解消。 公式ブログが、ページエクスペリエンスは独立した単一のランキングシステムではなく、コアランキングシステムが参照する多様なシグナルの一部である、と位置づけを整理しました。冒頭で引用した現行ドキュメントのFAQ(「単一のシグナルはない」)は、この整理を反映したものです。
2024年3月 — INPがFIDを置き換え。 同記事の更新注記に、2024年3月12日付で応答性の指標が FID(First Input Delay)から INP(Interaction to Next Paint)に置き換えられたことが記録されています。
Update on March 12, 2024: Interaction to Next Paint (INP) has replaced FID as a part of Core Web Vitals.
(2024年3月12日更新: Core Web Vitals の一部として、INPがFIDを置き換えました)
影響の大きさ — 誤りやすい2つの解釈
経緯を踏まえると、両極端の解釈がいずれも公式資料と整合しないことがわかります。
「速ければ速いほど順位が上がる」は成り立ちません。 2018年のSpeed Updateは「最も遅いページのみ」に影響すると明言されており、現行ドキュメントも、測定レポートで良好な結果を得ることが上位表示を保証しないと明記しています。
Keep in mind that getting good results in reports like Search Console’s Core Web Vitals report or third-party tools doesn’t guarantee that your pages will rank at the top of Google Search results; there’s more to great page experience than Core Web Vitals scores alone.
(Search ConsoleのCore Web Vitalsレポートなどで良好な結果を得ても、検索結果の上位に表示されることが保証されるわけではありません。優れたページエクスペリエンスは、Core Web Vitalsのスコアだけで決まるものではありません)
「速度は順位に無関係」も成り立ちません。 前述のとおり、現行ドキュメントは「Core Web Vitals are used by our ranking systems」と明記し、Core Web Vitalsの解説ページでは良好な値の達成を「強く推奨(highly recommend)」しています。
現行ドキュメントは、この中間の位置づけを次のように表現しています。
But for many queries, there is lots of helpful content available. Having a great page experience can contribute to success in Search, in such cases.
(しかし多くのクエリでは、役立つコンテンツが数多く存在します。そのような場合には、優れたページエクスペリエンスが検索での成功に寄与し得ます)
公式資料の記述を総合すると、実際の位置づけは次のようになります。関連性が常に優先される。そのうえで、関連性の高いコンテンツが多数ある場面では、優れたページエクスペリエンス(速度を含む)が検索での成功に寄与しやすくなる。ここから「競合の多い領域ほど速度改善の相対的な意味が大きくなる」と読むこともできますが、この後半は公式記述からの推論であり、Google自身の言い回しは上記のとおり慎重です。
評価指標 — Core Web Vitals
現在、速度・応答性・視覚的安定性の評価に使われている指標群が Core Web Vitals です。Googleのウェブ開発者向け公式サイト web.dev の解説によれば、構成は次の3指標です。
| 指標 | 測定対象 | 「良好」の基準 |
|---|---|---|
| LCP(Largest Contentful Paint) | 読み込み速度(主要コンテンツの表示完了) | 2.5秒以内 |
| INP(Interaction to Next Paint) | 応答性(操作から画面反応まで) | 200ミリ秒以下 |
| CLS(Cumulative Layout Shift) | 視覚的安定性(レイアウトのずれ) | 0.1以下 |
評価は個々のアクセスではなく、モバイル・デスクトップ別に集計された実ユーザー計測値の75パーセンタイルで判定するのが基準とされています。75パーセンタイルとは、全アクセスの75%がその値以下に収まる地点のことです。Search Consoleのヘルプも、たとえばLCPについて「過去28日間のページリクエストの75%が、この時間以内に主要コンテンツの表示に達した」という形で説明しています。つまり「大半のユーザーにとって基準を満たしているか」を見る設計です。
PageSpeed Insights の100点は、検索順位の100点ではない
ここまでの位置づけを実務に引きつけると、優先順位は次のようになります。まず検索意図に合った内容を整えること。そのうえで、Search Consoleで「不良」と判定されているページから改善すること。すでにCore Web Vitalsが良好なサイトが、SEOだけを目的に測定ツールの満点を追い続ける優先度は高くありません。現行ドキュメントには次の一文があります。
These scores are meant to help you to improve your site for your users overall, and trying to get a perfect score just for SEO reasons may not be the best use of your time.
(これらのスコアは、サイトをユーザー全体にとって良くするための助けとなることを意図したものです。SEOだけを理由に完璧なスコアを目指すことは、時間の最良の使い方ではないかもしれません)
測定方法
Googleが提供するツール
Core Web Vitals の測定手段は、まずGoogle自身が公式に提供・解説しています。
PageSpeed Insights — URLを入力するだけで任意の公開ページを測定できるWebツールです。公式解説によれば、実際のChromeユーザーの体験データ(フィールドデータ)と、シミュレーション環境での測定(ラボデータ)の両方を表示します。ただしフィールドデータの表示には、CrUXデータセットに含まれるだけの十分な実測データが必要で、公開直後のページや実ユーザーのサンプルが少ないページでは表示されないことがある、と公式解説に明記されています。ラボデータについては「管理された環境で収集されるため問題の切り分けに有用だが、実環境のボトルネックを捉えられない場合がある」と説明されており、検索の文脈で意味を持つのはフィールドデータの方です。
Search Console の Core Web Vitals レポート — 十分な実ユーザーデータがあるURLグループを、実際の利用データに基づいて「良好」「改善が必要」「不良」に分類するレポートです。ヘルプによれば、報告に足るデータ量がないURLはレポートから省かれるため、サイトの全ページが常に網羅されるわけではありません。前掲のページエクスペリエンスのドキュメントでも、自サイトの評価の確認手段としてこのレポートが案内されています。
Lighthouse — Chrome DevTools・コマンドライン・Node.jsモジュールとして実行できるオープンソースの監査ツールです。公開前のページや認証が必要なページも測定できるため、開発中の診断に向きます(測定されるのはラボデータです)。
Chrome UX Report(CrUX) — 上記のフィールドデータの供給元となるデータセットで、実際のChromeユーザーの体験を集計したものです。PageSpeed InsightsやSearch Consoleのレポートは、このデータに基づいています。
ホスティング事業者・第三者のツール
測定の手段はGoogle製ツールに限られません。ホスティング事業者も、自社の基盤に組み込まれた測定機能を提供しています。
Cloudflare Observatory — Cloudflareのダッシュボードに含まれる測定機能です。公式ドキュメントによれば、ヘッドレスブラウザでページを読み込んで Google Lighthouse を実行する合成テスト(ブラウザテスト)に加え、実訪問者のデータを収集するリアルユーザーモニタリング(RUM)にも対応します。当サイトのようにCloudflare上で運用しているサイトであれば、追加のツールを導入せずに継続的な監視ができます。
Cloudflare Web Analytics — プライバシー重視の設計のアクセス解析です。公式ドキュメントによれば、実訪問者の Core Web Vitals を収集し、各指標を「良好」「要改善」「不良」の区分で自動評価して表示します。
Vercel Speed Insights — Vercelでホストするサイト向けに、Core Web Vitals に基づく実ユーザーの性能データをダッシュボードで確認できる機能です。公式ドキュメントによれば、75パーセンタイルの推移を基本に、デバイス別・経路別・国別の内訳も見られます。
このほか、ホスティングに依存しない第三者の測定サービスには WebPageTest などがあります。いずれのツールも、Google検索側から見た評価の確認(Search ConsoleのCore Web Vitalsレポート)を置き換えるものではありませんが、同じ指標を日常的に監視し、改善の効果を検証する手段になります。
まとめ
- ページ速度は2010年から検索ランキングに使われており、現行ドキュメントも「Core Web Vitals はランキングシステムで使用されている」と明記しています
- ただし単一の「速度シグナル」「ページエクスペリエンスシグナル」は存在せず、コアランキングシステムが参照する多様なシグナルの一部という位置づけです(2023年に整理)
- Googleは一貫して「コンテンツの関連性が優先」と明言しており、速度を含むページエクスペリエンスが効きやすいのは、関連性の高いコンテンツが多数ある場面です。良好なスコアが上位表示を保証するわけでもありません
- 評価指標は Core Web Vitals(LCP 2.5秒以内・INP 200ミリ秒以下・CLS 0.1以下)で、モバイル・デスクトップ別に集計した実ユーザー計測値の75パーセンタイル(全アクセスの75%がその値以下に収まる地点)で判定されます
- 測定の入口は PageSpeed Insights(単一ページ)と Search Console の Core Web Vitals レポート(サイト全体)です。Search ConsoleはCrUXの実ユーザーデータに基づき、PageSpeed Insightsはデータが十分な場合にCrUXのフィールドデータを表示し、あわせてLighthouseによるラボテストも実行します
- すでにCore Web Vitalsが良好なサイトが、SEOだけを目的に測定ツールの満点を追い続ける優先度は高くありません。「SEOだけを理由に完璧なスコアを目指すことは、時間の最良の使い方ではないかもしれない」というのが公式ドキュメントの記述です
参考
- Understanding page experience in Google Search results — Google Search Central
- Understanding Core Web Vitals and Google search results — Google Search Central
- Using site speed in web search ranking(2010年4月9日) — Google Search Central Blog
- Using page speed in mobile search ranking(2018年1月17日) — Google Search Central Blog
- Evaluating page experience for a better web(2020年5月28日) — Google Search Central Blog
- More time, tools, and details on the page experience update(2021年4月19日) — Google Search Central Blog
- Timeline for bringing page experience ranking to desktop(2021年11月4日) — Google Search Central Blog
- The role of page experience in creating helpful content(2023年4月19日) — Google Search Central Blog
- Web Vitals — web.dev
- PageSpeed Insights / About PageSpeed Insights — Google for Developers
- Core Web Vitals report — Search Console ヘルプ
- Introduction to Lighthouse — Chrome for Developers
- Overview of CrUX — Chrome for Developers
- Observatory — Cloudflare Docs
- Core Web Vitals — Cloudflare Web Analytics Docs
- Speed Insights Overview — Vercel Docs
- WebPageTest
